補足

●「リスクのあるところに妙味あり」という考え方をすれば、競馬とは自分が選んだ本命馬が背負っているリスクを織り込み、その逆風を本命馬と共にねじ伏せてやろうという「覚悟」をするゲームなのかもしれない。競馬は論理的に考えて死角の少ない馬が人気になり、克服しなければいけない課題が多い馬ほど人気が低いわけだが、その課題を前に「うーん、こんなリスクがあるのでは割り引かざるをえないな」と減点法で考えるのではなく、「リスクがあるからこそ乗り越える価値(妙味)がある」という考え方をしてみようということ。今年の有馬におけるメイショウサムソンには論理的に考えて導き出せる死角というのはほとんどなかったんじゃないかと思うが(だからこその一番人気だが)、ハッキリ言ってそういう死角のない大本命馬を買う事で得られるものというのは、リスクのある穴馬を選んで得られるものと比べて、「割に合わない」という気がしているのだ。


勿論それはその本命馬をハナっから削ってしまうような蛮勇を奮おうということではない。本命馬は誰から見ても明確な死角が存在せず、かなり高い割合で好走するであろうということが万人に理解できるからこそ人気になるし、実際かなり高い割合で好走するのだから、これをハナからいないものとして考えるような真似はできない。ただ、調教技術の発達により競争馬の能力が底上げされ、飛びぬけて高い能力を持った馬というのが中々現れなくなった昨今では、大きな能力差がないのにも関わらず、「目立った死角がない」というだけで本命に推される馬を軸足にすえることは、あまりにも「見返りの少ない行為」ではないかと感じるのだ。本命馬券はオッズが低い分コストもかさむ、控除率は本命馬券も穴馬券も変わらない、メイショウサムソンのような死角がほとんどないといっていい馬でもコロリと負ける…。中には勿論ディープインパクトのような、はっきりと飛び抜けた能力をもっている例外の馬も存在するが、基本的に競馬において大本命馬を買うという行為は、リスクが少ないように見えて、実は大きなリスクを孕んでいるのだということを注視して然るべきではないだろうか。そう考えていくとやはり競馬で軸足にすべきは「穴馬の発見」であり、「その穴馬の抱えるリスクを認識すること」、「そのリスクを飲み込んだ上で、克服可能と見れば投資をすること」であろう。逆風にあえぐ馬にこそ、投資をする価値がある。共に恐怖を乗り越えた先にリターンがある。逆風こそを追い風ととらえるべきだ。最早これは競馬予想ではなく、競馬思想とでも呼ぶべきようなものである!